【にっぽんの温泉100選】草津温泉が23年連続1位!強さの秘密と最新順位

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草津温泉イメージ 温泉
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年末年始の旅行シーズンを前に、今年もまた「あのランキング」が発表されました。
旅行業界のプロフェッショナルたちが選ぶ、第39回「にっぽんの温泉100選」。
結果を先にお伝えしてしまうと、群馬県の草津温泉がまたしても1位を獲得しています。
これでなんと23年連続。
生まれた子供が社会人になるほどの長い歳月、トップを走り続けるというのは並大抵のことではありません。

ただ、今回の発表資料を隅々まで読み込んでいくと、「いつもの顔ぶれ」という一言では片付けられない、地殻変動のような変化が見えてきます。
2位と3位の順位変動、そして北陸新幹線の影響をモロに受けたあわら温泉の躍進。
ランキングの数字の裏側には、生き残りをかけた各温泉地の凄まじい「経営努力」が隠されているのです。
今回は、単なる順位の紹介にとどまらず、なぜ草津はこれほど強いのか、他の温泉地はどう戦っているのか、観光経済新聞社が発表した最新データをもとに、ニュースの深層を紐解いていきましょう。

第39回「にっぽんの温泉100選」の詳細とランキング結果の全容

温泉ランキング

我々一般人が温泉宿を選ぶとき、ネットの口コミやSNSの映え写真を参考にすることが多いですが、このランキングの重みは少し種類が違います。
なにせ投票しているのが、JTBやKNT-CTホールディングス、日本旅行といった大手旅行会社の社員たちなのですから。
彼らは「客を送り込むプロ」です。単に景色が良いとか湯が良いというだけでなく、「安心して顧客を案内できるか」「地域全体で観光客を受け入れる体制ができているか」という極めてシビアな視点で評価を下します。
今回発表されたランキングには、そうした「現場のリアリティ」が色濃く反映されていると言っていいでしょう。
23年連続1位という草津の偉業も、単なる人気投票ではなく、旅行のプロたちからの絶大な信頼の証左なのです。
ここではまず、発表された順位の具体的な中身と、特筆すべき動きについて詳しく見ていきます。

順位 温泉地名(県名) 前回 変動要因・特徴
1位 草津温泉(群馬県) 1位 23年連続トップ。若年層の取り込みや景観整備が奏功。
2位 下呂温泉(岐阜県) 3位 2年ぶりの2位奪還。データマーケティングや官民連携が高評価。
3位 道後温泉(愛媛県) 2位 本館全館営業再開。アートプロジェクトなどで魅力を発信。
7位 あわら温泉(福井県) 23位 北陸新幹線延伸効果で大躍進。周辺観光地との連携も評価。

盤石の強さを見せる草津温泉と入れ替わったトップ3の顔ぶれ

これほどまでに強いとは、正直驚かされます。1位の草津温泉(群馬県)は、今回も王座を譲りませんでした。
「にっぽんの温泉100選」において23年連続のトップ。
四半世紀近くにわたり、日本中の旅行業者が「草津なら間違いない」と太鼓判を押し続けているわけです。
特筆すべきは、その評価が「現状維持」ではないこと。
湯畑周辺の景観整備や、若年層をターゲットにしたSNS戦略など、常に新しい手を打ち続けている点が、プロたちに高く評価されました。
変わらないために変わり続けている、それが草津の強さの根源でしょう。

一方で、2位と3位には動きがありました。前回3位だった下呂温泉(岐阜県)が、今回は2位に浮上。
逆に前回2位だった道後温泉(愛媛県)が3位となりました。
もっとも、道後温泉に関しては本館の改修工事という特殊事情があり、ようやく全館営業再開にこぎつけたばかり。
話題性は抜群でしたが、順位としては一歩後退した形です。
対する下呂温泉は、2年ぶりの2位奪還。
トップ3の常連であるこの3温泉地、まさに三つ巴の戦いを繰り広げており、わずかな戦略の違いやタイミングが順位に直結するシビアな世界がここにあります。
単なる人気投票と侮るなかれ、ここには地域間の激しい競争原理が働いているのです。

北陸新幹線の延伸効果で大きく躍進したあわら温泉の注目度

今回のランキングで最もドラマチックな動きを見せたのが、福井県のあわら温泉でしょう。
前回23位だったのが、一気に7位までジャンプアップしました。
トップ10圏外からシングルナンバーへの急浮上、これは尋常なことではありません。
要因は明白、北陸新幹線の福井・敦賀延伸です。
首都圏からのアクセスが劇的に改善されたことで、旅行会社も「売りやすい」と判断し、一気に票が集まりました。

あわら温泉の強みは、単体での魅力だけではありません。
周辺には断崖絶壁の景勝地・東尋坊があり、坐禅体験で有名な永平寺があり、さらには恐竜博物館というキラーコンテンツまで控えています。
新幹線という大動脈がつながったことで、これら周辺観光地を含めた「面」での魅力が一気に花開きました。
星野リゾートの進出も発表されており、大手資本が目を付けるほどのポテンシャルが、新幹線開通を機に顕在化したと言えます。
交通インフラの変化が、温泉地の勢力図をこれほど鮮やかに塗り替えてしまう。
まさに「風が吹けば桶屋が儲かる」ならぬ「新幹線が通れば温泉が潤う」を地で行く結果となりました。

地域ぐるみの取り組みが評価された3つの実行委員会特別賞

ランキングの順位とは別に、独自の輝きを放つ温泉地を表彰する「実行委員会特別賞」。
今回は天童温泉(山形県)、城崎温泉(兵庫県)、由布院温泉(大分県)の3地域が選出されました。
これらは単に集客数が多いから選ばれたのではありません。
それぞれの地域が抱える課題に対し、ユニークかつ本質的なアプローチで挑んでいる点が評価されたのです。
数字には表れにくい「地域の汗と涙」にスポットライトを当てた賞と言えるでしょう。

DMC天童温泉は、ユニバーサルデザインの推進という、これからの日本社会に不可欠なテーマに取り組みました。
高齢者や障がい者が安心して温泉を楽しめるよう、ハード面の改修だけでなく、介護事業者と連携した入浴サポートの仕組みまで構築しています。
これは高齢化が進む日本において、温泉地の新しいあり方を提示する重要なモデルケースです。
一方、北但大震災復興100年記念プロジェクト実行委員会は、城崎温泉の歴史的な文脈を重視しました。
1925年の大震災から100年という節目に、過去を振り返るだけでなく、次の100年を見据えたまちづくりを議論。
悲劇の記憶を未来へのエネルギーに変える姿勢が評価されています。
そして由布院温泉観光協会らは、由布院駅開業100年を契機とした活動を展開。
もともと「まちづくり」で有名な由布院ですが、先人たちの精神を次世代へどう継承していくか、持続可能な観光地経営への真摯な姿勢が認められました。

旅行のプロが選ぶ投票システムの仕組みとランキングの信頼性

この「にっぽんの温泉100選」が他のランキングと一線を画す最大の理由は、その投票システムにあります。
投票権を持つのは、JTBや近畿日本ツーリスト、日本旅行といった大手エージェントに加え、じゃらんnetや楽天トラベルなどのOTA(オンライントラベルエージェント)、さらには鉄道・航空会社の担当者たち。
要するに、日本の観光産業を動かしている「中の人」たちが投票しているのです。

今回は投票はがきとオンライン投票を合わせて、有効投票数は1993件。
1件の投票で最大5カ所まで記入できるため、総投票数は8836票にのぼりました。
7月から10月という、まさに秋冬の旅行商品を造成・販売する時期に集計されたデータであり、業界の「今の気分」がリアルに反映されています。
彼らは、クレームが来そうな質の低い温泉地には決して票を入れません。
自分たちの顧客を自信を持って送り出せる場所、あるいは実際に送客して反応が良かった場所を選ぶ。だからこそ、このランキングには「ハズレがない」という信頼性が担保されているのです。
ネット上の匿名投票とは違い、投票者の顔が見える(業界内での評価が問われる)というプレッシャーの中で選ばれた結果には、重みがあります。

同時発表された人気温泉旅館ホテル250選と5つ星の宿の認定

温泉地全体の評価と同時に発表されたのが、「人気温泉旅館ホテル250選」です。
温泉地という「面」の評価に対し、こちらは個々の宿という「点」の評価。
2025年度は263軒が入選を果たしました(同経営の施設をまとめて1選とするルールがあるため、数は250を超えます)。
さらに、この入選を5回以上達成した宿には「5つ星の宿」という称号が贈られます。今年度は231軒がその栄誉を手にしました。

「5つ星」と聞くと海外のホテル格付けを連想しますが、こちらの基準は「旅行のプロが5回以上選んだ」という継続性への評価が含まれています。
一発屋では取れない称号なのです。今回、新たに3軒がこの「5つ星」の仲間入りを果たしました。
さらに上のランクとして、通算25回入選という殿堂入り級の「プラチナ旅館・ホテル」もあり、今回新たに10軒が認定され、合計95軒に。
これらリストに名を連ねる宿は、日本の旅館文化の守護神と言っても過言ではありません。
料理、接客、施設の維持管理、すべてにおいて高水準を維持し続けることの難しさ。
それをクリアした宿だけが載るリストは、我々が旅先を選ぶ際の最強のガイドブックとなり得ます。

観光トレンドの変化から読み解く温泉地経営の戦略と未来

SNS戦略

ランキングの結果を一通り見てきましたが、ここからは少し視点を変えて、なぜ順位が変動したのか、その背景にある「観光地経営」のロジックを探っていきましょう。
温泉地といえば、昔は「良い湯が湧いていれば客が来る」という牧歌的な時代もありました。
しかし今は違います。情報過多の時代、待っているだけの温泉地は埋没し、忘れ去られる運命にあります。
今回の上位陣、特に「にっぽんの温泉100選」で長年トップを走り続ける草津温泉や、復活を遂げた下呂温泉の取り組みを見れば、それが単なる観光振興を超えた、緻密なビジネス戦略の上に成り立っていることがわかります。

なぜ草津温泉は若年層を取り込み23連覇を達成できたのか

草津温泉が23年も王座を守っている事実に、「またか」と感じる人もいるかもしれません。
しかし、その内実は驚くほどアップデートされています。
かつての草津といえば、年配の湯治客や団体旅行がメインの客層でした。
ところが今、週末の湯畑周辺を歩いてみてください。
驚くほど若いカップルや学生グループが多いことに気づくはずです。これは偶然ではありません。

草津は「景観」を徹底的に再構築しました。
湯畑周辺のライティングを一新し、夜の散策をエンターテインメント化。
さらに「裏草津」と呼ばれる地蔵エリアを再開発し、カフェや漫画堂を整備することで、若者が滞在したくなる空間を作り上げました。
特筆すべきは、これらが「写真映え」を意識して計算されている点です。
訪れた若者がSNSで発信し、それが広告となって次の客を呼ぶ。
このサイクルを完全に確立しました。
伝統的な「湯もみ」などの文化を残しつつ、見せ方を現代風にアレンジする手腕。
古い温泉地が陥りがちな「古臭さ」を「レトロモダン」という価値に変換した戦略こそが、首都圏の旅行会社から圧倒的な支持を集め続ける最大の要因でしょう。

下呂と道後の順位変動に見るリピーター獲得に向けた戦略の違い

下呂温泉

※2018年

2位と3位が入れ替わった下呂と道後。
この2つの温泉地は、それぞれ異なるアプローチで魅力を磨いています。
今回2位に返り咲いた下呂温泉の勝因は、「総合力」と「データ活用」にあります。
もともと泉質の良さは折り紙付きですが、それにあぐらをかかず、官民が連携してデータマーケティングを導入しました。
どんな客層が、何を求めて来ているのかを分析し、グルメやイベントを拡充。
地元企業の経営改善にもメスを入れるなど、地域全体で「稼げる観光地」への脱皮を図っています。

対照的に、3位の道後温泉は「アート」と「歴史」の融合を武器にしています。
道後温泉本館という絶対的なアイコンを持ちながら、著名アーティストとのコラボレーションを積極的に展開。「古いのに新しい」というブランドイメージを確立しました。
今回は本館の全館営業再開というビッグニュースがありましたが、それが一巡した後の「次の一手」が問われるタイミングでもありました。
下呂が地道な足腰の強化(経営改善やデータ)で票を伸ばしたのに対し、道後は話題性先行のフェーズから、どう実利に結びつけるかの過渡期にあったのかもしれません。
どちらも極めて高度な戦略ですが、今回は下呂の「地域一丸となった底上げ」に軍配が上がった形です。

新幹線や2次交通の整備が温泉地ランキングに与える具体的影響

「アクセスが良くなれば人は来る」。
当たり前のようですが、今回のあわら温泉の躍進は、その効果の凄まじさを改めて証明しました。
北陸新幹線の延伸は、単なる移動時間の短縮以上の意味を持ちます。
それは「心理的な距離」の短縮です。
東京から乗り換えなし、あるいはスムーズな接続で行けるという事実は、旅行先を決定する際の強力な動機付けになります。

しかし、ただ新幹線が通れば良いというわけではありません。
駅からの「2次交通」がカギを握ります。
駅から温泉街までどう移動するか、周辺観光地へどうアクセスするか。
あわら温泉の場合、新幹線駅からの接続や、周辺の東尋坊・永平寺への周遊ルートがセットで評価されました。
逆に言えば、どんなに良い温泉でも、たどり着くのが不便であれば、旅行会社はツアーを組みにくいのです。
今回のランキングは、地方の温泉地にとって「交通インフラといかに連携するか」が死活問題であることを突きつけています。
今後、各地で予定されている交通網の整備が、温泉地図をどう書き換えていくのか、注視する必要があります。

ハード面の改修だけでなく持続可能なまちづくりが評価される時代

今回のランキングで見逃せないのが、「持続可能なまちづくり」というキーワードです。
特別賞を受賞した天童、城崎、由布院の事例を見てもわかる通り、旅行会社は「いま綺麗なホテルがあるか」だけでなく、「10年後、20年後も魅力的であり続けられるか」を見ています。

例えば天童温泉のユニバーサルデザイン。
これは一過性のイベントではなく、インフラとしての優しさへの投資です。
城崎の震災復興プロジェクトも、歴史を教訓にした防災や景観維持への決意表明と言えます。
建物などのハード面はいずれ老朽化しますが、地域に根付いた「もてなしの心」や「運営の仕組み」といったソフト面は、磨けば磨くほど輝きを増します。
旅行会社が票を投じる際、そうした地域住民の熱量や、自治体のビジョンまで見透かしているとしたら、このランキングは単なる人気投票を超えた「地域の通信簿」と言えるのかもしれません。
SDGsという言葉が叫ばれる前から、温泉地は自然と共生し、地域社会を維持する戦いを続けてきたのです。

日本の温泉文化を支える地域努力と次なる旅の楽しみ方

日本の温泉文化

結局のところ、ランキングの順位はひとつの指標に過ぎません。
しかし、その数字の向こう側には、客を呼ぶために知恵を絞り、汗を流す人々の姿があります。
草津がなぜ強いのか、あわらがなぜ伸びたのか。
その理由を知った上で訪れる温泉は、今までとは少し違った景色を見せてくれるはずです。
次に温泉旅行を計画する際は、ぜひこの「にっぽんの温泉100選」の結果を思い出してみてください。
プロが選んだ理由を現地で答え合わせする、そんな旅のスタイルもまた一興ではないでしょうか。

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